公益財団法人白鶴美術館

展覧会情報

2025年 秋季展

本館

吉祥の美 ―中国陶磁

概要

 新館は当館60周年記念事業において、第4代理事長嘉納秀郎(白鶴酒造第10代)コレクションのペルシア・アナトリア・コーカサス絨毯を主な所蔵品とする展示施設として設立されました。
 開館は1995年10月。同年1月におきた阪神淡路大震災の影響を受け、予定より7か月遅れての初公開でしたが、当館復興を記念する展示ともなりました。
 今秋は新館開館30周年として、当初より所蔵する中東絨毯の優品を中心に、この30年間に寄贈されたホータン(中国)やムガール(インド)の絨毯も一部初公開致します。
 本館は、所蔵の中国陶磁展となっております。繁栄を意味する荷葉(かよう:蓮)や柘榴、富貴を表す牡丹、長寿の象徴たる松、吉祥の徴(しるし)である鳳凰や麒麟など、華やかで寿(ことほ)ぎに満ちた文様世界をご鑑賞ください。

主な展示品
唐三彩荷葉飛雁文盤(とうさんさいかようひがんもんばん)
唐時代 D.28.8cm
唐三彩荷葉飛雁文盤(とうさんさいかようひがんもんばん)
唐三彩荷葉飛雁文盤(とうさんさいかようひがんもんばん)
唐時代 D.28.8cm

 唐三彩は鮮やかな美しさが魅力の陶磁器である。多くは副葬品として製作された。俑(よう:人形や動物形)や金属器の飲食器写しなどがあり、当時の文化を知るうえで重要な器物となっている。
 この作品の中央の円形に雁と雲気文が描かれている。その周りを旋回する緑の扇状文様が「荷葉(かよう)」、すなわち蓮の葉である。蓮の葉の間に描かれる反復文様は、霊芝雲。霊芝は仙人の食物とされる。蓮は水辺で繁茂する生態から生命力の象徴となっている。

金襴手寿字文大鉢(きんらんでじゅじもんおおばち)
明時代 D.27.0 cm
金襴手寿字文大鉢(きんらんでじゅじもんおおばち)
金襴手寿字文大鉢(きんらんでじゅじもんおおばち)
明時代 D.27.0 cm

 明時代、嘉靖年間(1522-1566)に景徳鎮窯で焼成された「金襴手」は、赤や青・白などの地に金彩文様を焼き付けた器で、その艶(あで)やかは、まさに金糸を織り込んだ染織品である金襴緞子(きんらんどんす)を思わせる。本作の場合、赤い外側に施された金彩が部分的に残っており、富貴の象徴たる牡丹文が描かれていたことが伺える。
 内底には「寿」の文字を象る松を、口縁部にも吉祥植物文の代表である松竹梅を配する。寿字の松を囲む八角芒星(ぼうせい)形の内側に描かれる繋(つな)ぎ文は、観音像などの胸元にみえる装身具、「瓔珞(ようらく)」をモチーフとする吉祥文である。

金襴手瓢形瓶(きんらんでひさごがたへい)
明時代 H.62.4㎝
金襴手瓢形瓶(きんらんでひさごがたへい)
金襴手瓢形瓶(きんらんでひさごがたへい)
明時代 H.62.4㎝

 多産・子孫繁栄を表す瓢(ひさご)形を基に、下部を方形に象る。各四面には八稜形が配され、その中央に金彩による牡丹唐草文、その周りに二つの方形を45度ずらして重ねた八角星形が描かれている。
 本作は金彩の残りのよい艶(あで)やかな器で、この作品にのように、金彩の文様には牡丹唐草文・八卦文(はっけ:三段横棒状の文様)や、吉祥を表す文字などがみられる。
 上部の地文である「毘沙門亀甲(びしゃもんひし)」状の文様は、仏教における眷属(けんぞく)などの胴着を思わせるものだが、下部地文の菱花状の繋ぎ文とともに、吉祥文として金襴手の装飾に多用される文様となっている。

資料