公益財団法人白鶴美術館

展覧会情報

2025年 秋季展

新館

新館開館30周年記念 中東美術の華 ―絨毯

概要

 新館は当館60周年記念事業において、第4代理事長嘉納秀郎(白鶴酒造第10代)コレクションのペルシア・アナトリア・コーカサス絨毯を主な所蔵品とする展示施設として設立されました。
 開館は1995年10月。同年1月におきた阪神淡路大震災の影響を受け、予定より7か月遅れての初公開でしたが、当館復興を記念する展示ともなりました。
 今秋は新館開館30周年として、当初より所蔵する中東絨毯の優品を中心に、この30年間に寄贈されたホータン(中国)やムガール(インド)の絨毯も一部初公開致します。

主な展示品
アクスタファ コーカサス
19世紀中期 214×114㎝
アクスタファ コーカサス
アクスタファ コーカサス
19世紀中期 214×114㎝

 中央フィールド(絨毯主要画面)に3つの星型メダリオン(メダル形)を配する。同じ二つ正方形の中心を45度ずらして重ねた八角星形を基本とする文様は、イスラーム建築のタイルなどに見られ、イスラーム文化の象徴的な形ともなっている。メダリオンの間に向き合う形で配された鳥形は、アクスタファ・デザインの典型的なモチーフで、冠羽(かんう)と立派な尾羽から、クジャクのモチーフと思われる。
 メインボーダー(フィールドを囲む主要枠)には、背中合わせにした鳥(「インターロック」と呼ばれる)文が連続する。細やかに装飾の施されたデザインとなっている。

モフタシャム カーシャーン ペルシア中央部
20世紀初期 310×229㎝
モフタシャム カーシャーン ペルシア中央部
モフタシャム カーシャーン ペルシア中央部
20世紀初期 310×229㎝

 古くから伝統工芸の町として知られたカーシャーンで、19世紀末から20世紀初期につくられた品質の高い絨毯は、工匠名に由来してモフタシャムと総称される。
 本作品は、フィールド中央に二層の曲線的なメダリオン(メダル形)を置き、四隅にこの形を四分割したシルエットに似せた区画をデザインしている。それぞれの区画と外周のメインボーダーは、 蔓(つる)草文(エスリム)と、多彩な花や鳥で埋め尽くされている。
 それぞれの地色に「アブラッシュ」と呼ばれる染め班(むら)がみられるが、文様の輪郭の明快さは織り手の熟練度を示している。

イスファハーン ペルシア中央部 シュレシ工房
20世紀中期 200×143㎝
イスファハーン ペルシア中央部 シュレシ工房
イスファハーン ペルシア中央部 シュレシ工房
20世紀中期 200×143㎝

→コレクションのページをご参照ください。

ベルガマ アナトリア西部
20世紀中期 103×100㎝
ベルガマ アナトリア西部
ベルガマ アナトリア西部
20世紀中期 103×100㎝

 臙脂(えんじ)とインディゴの明快なコントラストを基調としながらも、図案の豊かさを印象付けるベルガマ地方の絨毯。絨毯下部に織り込まれたモヘアウールは類例が少ない珍しい形である。
 このような特徴の小型の絨毯は「乙女」の名が冠されたキズ・ベルガマ(Kiz Bergama)と称されるもので、花嫁が自ら製作し婚礼調度品として婚家に持参するといった、村落生活における婚姻儀礼では欠かせない役割を担う。
 フック文様に囲われたコーナー(絨毯主要画面の四隅)と菱形のメダリオン(メダル形)の内部に、幾何学的な花のモチーフが満たされた、乙女の絨毯にふさわしい華麗な作品となっている。

資料