財団法人 白鶴美術館
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新館 オリエント絨毯 -多様な文様-
 
オリエント絨毯の知識

1. 地理的環境と歴史
西アジアや中央アジアの絨毯の製作地の大部分は、寒暖の差が激しい大陸性気候の乾燥した砂漠、高原、ステップに位置しています。そこは耕地に限りがあるために、はやくから牧畜が盛んになり、ここから遊牧という独特の生活形態が発生し、極度の乾燥と寒気のなかで生き抜くための知恵として、羊毛製品の絨毯が生み出されました。
現存する最古の絨毯は南シベリアのアルタイ山中から発見されました。紀元前5世紀頃に中央アジアで織られたものですが、絨毯の起源はさらに数百年遡ると推定されています。但し、今日、私たちが目にする絨毯の大半は、ペルシャのサファヴィー朝(1501〜1736年)とオスマン・トルコ(1299〜1922年)のそれも17世紀以降に製作されたものです。
 
2. 染色と織り
厳しい冬を過ごした羊たちの深い毛は、春から初夏にかけて刈り取られ、不純物を取り除いた後、糸に紡がれ、次に金属塩の水溶液に漬ける媒染処理がなされ、天然染料の中で煮沸して染色がなされます。手織り絨毯(パイル絨毯)とは、指で経糸2本を単位として引き出し、この周囲に、様々な色合いのパイル糸を絡め、余ったパイル糸の両端を切って平坦な組織から立ち上がらせたものです。これが絨毯に厚みをもたせる、いわゆる毛羽です。このパイル糸を経糸に絡ませた一目を通常、「結び」とか「ノット」と呼びます。1平方メートル内のノット数が200万にも上ることもあります。絨毯の織りの技法として、「ペルシャ結び」と呼ばれているパイル糸を経糸1本にのみくぐらせて一巡させ、もう1本の経糸に弛くひっかける方法と、2本の経糸にそれぞれ外側から均等にパイル糸をくぐらせて中央に引き出す「トルコ結び」と呼ばれる方法があります。
トルコ結び ペルシャ結び
 
3.堅機と水平機
宮廷を含め都市の工房では、固定された堅機を使用して、専門のデザイナーによる洗練された感覚の図案のもとに、精度の高い技術をもつ職人が大型の絨毯を織りだしていました。遊牧民は本来自家用に、持ち運びに便利な水平機を使い、しかも意匠紙を使わず、記憶に頼って織っていました。
 
4.それぞれの文様の特色
イラン(ペルシャ) 草花・動物・人物などの写実的な描写、優美な唐草模様、繊細な表現方法が特徴です。
トルコ(アナトリア) 鳥・動物・草花の幾何学的な造形と、大胆で力強い色彩が特徴です。
コーカサス 抽象的なデザインと鮮やかな色彩、素朴な味わいが特徴です。
 
5.絨毯の代表的文様
メダリオン    
最も人気を呼んだモチーフで、花柄とか狩猟文と組み合わされて全体を構成する例が少なくありません。ペルシャ絨毯の場合、中央にメダリオンを置き、四隅に四分割したメダリオンを配したタイプが好まれたのに対して、トルコ絨毯では主軸上に大小のメダリオンを並べるか、全面に展開させる構成が好まれました。
中央に配されたメダリオンは、イスラムの神秘主義的な解釈によると、宇宙と信仰の中心で、天国へ至る入り口と考えられています。
  メダリオン
     
ミヒラーブ(壁龕)    
イスラム教徒は宗教的義務として1日5回、清潔な場所で身を清めて、メッカの方向を向いて礼拝するように定められています。平伏・跪拝するために清潔な空間を提供するのが礼拝用のミヒラーブ絨毯です。礼拝堂の内部を表現し、神の存在を示すランプが天井から吊り下がり、燭台や花瓶なども表されています。   ミヒラーブ(壁龕)
 
 
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