展覧会

2017年 秋季展

新館

文化の懸け橋 ―ペルシアと絨毯―

ペルシアはイランの古名ですが、かつては、西アジアだけでなく、中央アジアや 現在の中国・新疆ウイグル自治区等の地域にもペルシア系(イラン系)の言語を 使い、文化を有する人々が多数おりました。彼らは、文物を生み出すだけでなく、 東西交易の実際の担い手となって文化の伝達に大きく貢献しました。そうした人々 によってやがて作られる絨毯には、歴史の波を越えて残ってきた、様々な土地由来 の要素が複雑に織り込まれています。本展覧会では、ペルシアの文化と歴史を辿り、 白鶴美術館所蔵のペルシア絨毯に見られる各モティーフのルーツを探ります。

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主な展示品

タフリッシュ、ペルシア西部

20世紀中期

文化都市として著名なタフリッシュで製作された絨毯。当地の絨毯の特徴は、16個の突起を持つ大型のメダリオン文様にある。本作品は、正にそのタフリッシュ絨毯を象徴する特徴を備える大きなメダリオンを中央に置き、四隅にそれを四分の一に分割した文様を配する。当館のメダリオン絨毯を代表する堂々たる貫録を持つ。メダリオンは、地を濃い赤に彩色し、内部に紺や青、橙の花や蔓を巡らし、更に中央部に明るい橙の円形部を作る。メダリオン周囲(フィールド)はベージュとして、色彩のコントラストにより、あたかもメダリオンが浮かび上がるかのような効果を生んでおり、外周(ボーダー)には二種の花と鳥が交互に配される。鳥には青、黄色、橙のものがおり、これら外周の動植物は、メダリオンのエネルギーから生み出されるかのようである。
こうしたメダリオンと類似の文様は、中国に残る5世紀以来の仏教石窟(洞窟)の天井にも見られ、各種の宗教や地域で長きに亘って取り入れられ、空間の中心を成してきた。仏教美術では蓮華をこの種の文様の基本要素とするが、それはやがて密教の曼荼羅美術へと展開し、日本にも伝播する。根本的な文様の普遍性と伝播力の強さが理解される。

モフタシャム カシャン、ペルシア中央部

1900年頃

織物やタイルの産地として著名なカシャンで製作された絨毯の中でも、19世紀末から20世紀初にかけて作られ、品質が高い絨毯をモフタシャムと呼ぶ。本作品も正にその呼称にふさわしく、「美麗」とも称すべき出来を示す。特に、フィールドは大振りな花や鳥を配し、地を黄色で彩色し、華やかさを演出する。その中にあって、他の箇所の紺や赤、白が画面を引き締める。作品の主役はあくまでも中央のメダリオンであり、整然たる額縁のような外周(ボーダー)がそれを囲んで支える。メダリオンは、外側から内側へと観者を吸い込むような多重構造をとり、中央部に蓮のような花の形体を明確に残しており、文様の悠久性を感じさせる。

クチャン、ペルシア東部

暗めの彩色を基調としており、地味な印象を与えがちであるが、各種の特徴を持ち、製作のこだわりを垣間見せる。外周(ボーダー)に囲まれる内側の面は、地を緑から灰色、青灰色、緑と色彩をグラデーションのように変化させ、その上にメダリオンやコーナーの文様を重ねる。透彫り風に作り出されたそれらの文様の彫り抜き部分からも、地が織り成す色彩の変化が見られる。コーナーの文様の隅は細く交錯する線から成っており、幾何学的である。赤地の外周(ボーダー)に配される植物文を構成要素とした不可思議な文様は、17世紀シャーアッバスの古典文様である。文様はいずれも具体的な形象を示さず、そのため、彩色と相まって全体の一体感を生み出している

セラピ、ペルシア北西部

縦の長さが4メートル近い大きな絨毯。赤と緑の対比を際立たせる独特な色彩感覚が特徴である。緑には更に濃淡のグラデーションをつける箇所がある。真ん中には八弁の蓮華のような大きなメダリオンを配置する。メダリオンは、内外に多重の構造をとるが、そのうち最も外側の青地の部分は、各花弁内に緑、薄紅、黄、橙、青等の多色の植物文様を入れ、絨毯外周(コーナー)と対応させる。折り目が粗く、直線的なラインによってデザインされるため、一つ一つの文様は抽象的で奇妙な形象をしており、全体に野性味を帯びた力強さで満たされている。

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